折り紙のカエルから,子どもたちの思いがふくらむ (京都市立乾隆幼稚園)

カエルを見つける

園庭で体長5センチ位のカエルが1匹見つかった。5歳児の子どもたちは,初めは触るのもおそるおそるだったが,次第に慣れてきて,たらいに入れて泳がせたり,友達同士手渡したりしていた。関わることで身近になっていった。



2階の保育室にいるとカエルの鳴き声が聞こえた。「しーっ」と耳をそばだててみんなで聞く。

「名前はどうする?」





「棒を入れたら登るんじゃない?」

しかし,触りすぎたのか弱ってきたので,カエルを逃がすことにした。

「元気でね〜」

「背中に黄色い線があったなあ」「何ガエルだろう」と本で調べる。

みんなで折り紙のカエルをつくる

朝から雨が降っていたこの日,女児が3日前に家でつくった折り紙のカエルを教師に嬉しそうに見せた。カエルへの興味と共に,女児に自分の遊びがクラスに広がることで自信をもってほしいと願い、折り紙に全員で取り組むことにした。



「難しいなあ, 先生, 手伝って」
「ここが頭かな」
「後ろ足ができた!」

と出来上がりを想像しながら折る。

簡単ではなかったが何とか折り上げ「跳んだ!」と喜んでいた。

友達の様子を見て跳ばし方のコツをつかんだり,「せーの」と同時に跳ばしたりし,そのうちに「顔かこう」と数人の女児がカエルに顔をかき始めた。

カエルの折り紙から,カエル池づくりが始まる

2人の女児から始まった池づくりの楽しそうな雰囲気から,あっという間に,カエル池づくりがクラス全体に広がった。以下は,折り紙から派生したいろいろな遊びである。

 

カエルの池づくり



「池がいる」「私もつくる」と20センチ角ほどの大きさの水色の画用紙にハート形の葉っぱを何枚も切って貼り, カエルを乗せる。 

水面が埋まるくらいたくさんの葉をつくり, 「ぴょんぴょん」と跳んで葉を渡っていった。

 

カエルの家づくり



池に「おうちもいる」とカップや箱でカエルのサイズを意識しながらカエルの家をつくる10センチほど手前から家をねらい, カエルが跳んで上手く中に入ると大喜びだった。 

次第に, 意図的に向きや大きさが異なる入りやすい家と入りにくい家もできて, ゲームの要素が加わる。

さらに,いろいろな遊びに広がっていく

カエルのご飯ができる。1センチ角ほどのミニチョコレートだった。

自分たちの歯が抜け始め, 新しい歯を大事にしようと意識していたためか, 「チョコレート食べたから歯磨きしよう」とミニ歯ブラシをつくり, ご飯入れにセットで入れていた。

カエルの子どもをつくる。小さいカエルをたくさんかいて, 家族ができていった病気になるカエルが出てきて, 苦い葉っぱを薬にして飲ませていた。以前に遊んでいた自分たちの病院ごっこの再現のようだった。

カエルの本当のエサは何かと, 絵本室に行って図鑑を見る。教師と一緒に調べて虫やミミズを食べることが分かり虫の絵をかいたり毛糸でミミズをつくったりする。

「カエルを育てよう」と継続して餌やりをする。虫やミミズをつくって家に置いたり, 2人で, ミミズを動かす役とカエルを跳びつかせる役になったりして遊ぶ。


友達とつながり, 広くなった池をカエルが渡っていく。

箱を積んで京都タワーができ, 町のようになっていく。

「(大きい)ウシガエルもつくりたい」と大きな紙でカエルを折る大きいカエルは, 折り紙のものよりよく跳んで, 箱を跳び越える遊びになる。

後日, いろいろな大きさの紙でカエルを折り, 大きければ大きいほどよく跳ぶという訳ではないことを感じる。


この日は欠席だった子どもが,翌日に教師に「まだカエルつくってない」と言う。友達がつくったものを見て, やりたいと思ったのだろう。 イメージを膨らませて仕掛けを考え, 新たなカエルの池ができた。

 

カエル池の遊びから見えてきたことは・・・

  • 折り紙のカエルと池という共通項はもちながら,あっという間にいろいろな発想が広がった。子どもが使いやすいカエルの折り紙で遊ぶことを共通にしながらも,各々がすることは自由である。友達と共有するやりたい遊びの枠の中で,自分の力を発揮している。
  • あちこちで新しい物が生まれてくる活気ある雰囲気があった。友達と頭を突き合わせて遊ぶ中で刺激を受け,工夫が工夫を生んでいる。
  • 「それいい」と友達のアイデアを受け入れることで,池が友達とつながり広がっていった。子ども同士,相手の人となりをよく知り,互いの良さを受け入れる土台ができているからこそ,友達がいる楽しさを生活の中で感じているのだろう。
  • 子どもが遊びの中で感じる面白さのポイントを逃さずに,教師が一緒に面白がることで,もっとこうしたいという気持ちが膨らんでいくのだろう。教師は,子どもの何気ない言動や思いを見取ること,そして,いかにその姿を発想の豊かさとして受け止めることができるのかということが,大きな役割なのだと感じる。

京都市立乾隆幼稚園ホームページ https://cms.edu.city.kyoto.jp/weblog/index.php?id=500500


 

 

 

 

 

京都市立乾隆幼稚園紹介動画  https://www.youtube.com/watch?v=hoXosJeuqCc